もう辞めた会社にいた新人が凄まじかった。
コロナ流行に伴い在宅勤務を中心にしていたので彼女に直接会ったのは片手で数えるほどしかないが、それでも凄まじかった。
何が凄まじいかというと、「キミ、よくその純粋さのままで四半世紀以上生き残ってこれたね」という自己中心っぷりである。
普通、20年以上も生きていればな100%自分本位に生きるのは難しい。
他人との協力なしにひとは生きることができない。
「学生」というラベルが外れた成人に周りはいつまでも見返りのない協力はしないので、遅かれ早かれ社会に出る頃には“自分本位に生きるために相手に配慮する”という処世術を身につける。
ところが、彼女は違った。
一人一宇宙の創造主であり、他人の宇宙も自分の宇宙を輝かせるためにあると疑いなく信じている。
「わたし営業担当なので書類仕事はしたくありません」と教育係に言い放ち、仕事にミスがあったと発覚すれば「完璧にやったので絶対にミスなんかありません」と渋面するドクターXのパチモン。
*書類仕事も営業の仕事範囲だし、普通にミスもしていたし、営業としての打ち合わせはしていない
すげぇぜ。天空神ばりの威風堂々。
やつら、人間との生活に関わりがなくて結果的に礼拝されないデウス・オティオースス(暇な神)だからなぁ。
その点も類似してるよ。
その他にも彼女の打ち立てた偉業が耳にはいっているが、今後関わることもないのでそこには触れないでおく。
今回引っかかっているのは事あるごとに彼女の口から出ていたある言葉だ。
「わたし思ったことはすぐ口にしちゃうんですよね」
おそらく彼女と直接知り合いでなくとも、彼女以外のひとから聞いたことのある言葉だと思う。
このセリフを吐くやつは要注意人物だ。なぜなら、基本的に思慮と配慮に欠けているひとが好んで使う言葉だからである。
第一に、思慮に欠けている理由は簡単。
外部の刺激に対して咀嚼と思考を媒介せずに反射だけで感想を述べているからだ。
物事を理解するための咀嚼と、それに対する考察(思考)をする習慣がないということが、思慮のなさを物語っている。
気心の知れた友人とのお茶会ならまだしも、ビジネスの場では歓迎されない。
会社の飲み会でも隣に座りたくないね。帰れ。
思慮の欠如は理解してもらえたと思う。配慮の欠如はどうか。
まず「思ったことはすぐ口にしちゃうんですよね」という発言がされる経緯がどんな時だったかを思い返してみた。
「えー、なんか生地が薄くてパジャマみたいですね」
*打ち合わせがないのでスーツではなく適当な私服で会社にきた先輩に向けて
「ちょっと疲れたので、この後の説明はメモとらなくていいですか?」
*仕事についてレクチャーしていた先輩に向けて
脊髄反射で失礼な発言をした直後にこの言葉が使用される頻度が多い。
つまり、この言葉には自己弁解的な性質が含まれている。
その性質を括弧内で表現すると、以下のようになる。
「わたし、思ったことはすぐ口にしちゃうんですよね(だから、悪気があったわけではありません)」
うるせぇ、ぶっ飛ばすぞ。
裏表がないことと無礼を混同視するな、ボケ。
つまり何が言いたいかというと、この言葉が使用されている時点で相手への配慮に欠けた言葉が直前で繰り出された可能性が高い。
また、常日頃この調子のやつが外部刺激に応じた脊髄反射で紡ぐ言葉に配慮があるわけがないということだ。
以上を持って、「思ったことはすぐ口にしちゃうんですよね」=思慮と配慮の欠如の証明を完了した。
会社の新人のことはよく知らないので、あくまでもこの言葉の裏にある性格の考察であることをここで断っておく。
裏表がないことと無礼を混同視するなと前述したが、このふたつの違いも思慮と配慮の有無に起因する。
YouTube芸人のフワちゃんが全方向に対してタメ口でも芸能界の第一線で活躍しているのは、全方向に対して思慮と配慮があるからだ。
他人を貶める発言がなく、いじられても痛くない場所を絶妙なタイミングでいじり、番組全体が面白くなるために前に出過ぎない。
個人的に、フワちゃんの最も長けている能力は“全体構造の把握”だと思っている。
番組中にメタ的な発言が多いのもこれに所以する。
この天下一品の能力を持って、置かれているシチュエーションのルールを把握しつつ、そのなかで遺恨をのこさずに大騒ぎするのが上手い。
彼女の発言の数々を見れば、その発言に至るまでにどれだけの思慮と配慮を重ねているのかが見えてくる。
別にフワちゃんの知り合いでもファンでもないが、「思ったことはすぐ口にしちゃう」ということを口にしちゃうやつは全員フワちゃんのYouTubeチャンネル登録してから口を開け。
Youtubeでフワちゃん見たことないから内容知らないけど、多分思慮と配慮が読み取れるよ。きっとね。知らんけど。