発酵について調べてみた

独白するだけのゴリラになりたい。あと優しくなりたい。

休日にチーズを作ってみた。

ワインと牛乳だけで簡単に作れるカッテージチーズだ。

チーズの原料は乳に含まれるカゼインというたんぱく質で、ph値の低い酸性の液体を乳に混ぜることでたんぱく質を変性させて固まらせる。レモン水などでも作れるのだが、酸味がくどくなるのでワインで代用してみた。

結果、使用したワインがえっらい酸化していたため、ワインで作ったカッテージチーズは普通に酸味がくどかった…

自分はチーズが好きだ。学生時代に色々な国に赴いたが、中でも気に入っているのはポーランドの山岳地帯で生産されている山羊のスモークチーズが好きだ。

装飾された樽のような形状をしており、クランベリーのジャムをかけて食べる。

あまりにも気に入りすぎて10㎏程買ったことがある。

先日、ポーランド人と話す機会があり、あのチーズの素晴らしさを熱弁したのだが、「実はあれ、現地ではあまり人気ないよ」と言われてショックだった。

何が嫌いかよりは何が好きかで自分を語るから、別に気にしてはいないが。

原初のチーズ

基本的にまずいチーズというのに出会ったことはないが、唯一好きになれなかったチーズがある。

モンゴルで遊牧していた頃に食べさせられたハードチーズだ。

とにかく固いので、現地の人が石で割っていた。

しかもめちゃくちゃしょっぱかった。

しょっぱさの原因は塩だ。遊牧民は栄養が偏るし、遊牧するために食料の貯槽もできないため、栄養価の高いチーズを保存食としている。

保存性を高めるために必要なことは、食物の中から不要な水分を取り除くことだ。

生物にとって水は生命の源であり、だから生物はまず乾燥に対策を打つ。これはカビや菌などの微生物にも同じことが言えるので、微生物の繁殖を防ぐためには彼らが増殖するための余分な水をなくさなくてはいけない。

だから、たいていの保存食は食品内の余分な水を塩や砂糖と結合させて、微生物の生息地を極力なくすのだ。

そういうわけで、水分を失ったチーズはめちゃくちゃ固くなるし、しょっぱい。

そういえばベドウィンと呼ばれるラクダの遊牧民も同じようなチーズを食べると聞いた。

発酵とは何か

チーズを作ろうと思ったきかけは、以前購入した発酵についての本を読んだからだ。

まず発酵と腐敗は基本的に同じで、人間にとって良いか悪いかだけの違いである。

食品内のたんぱく質やデンプンなどの多糖類を微生物が分解し、アミノ酸やペプチドに変えることで香りや風味、旨味などが変わる。

発酵食品を作る微生物は大きく分けると3種類で、カビ・発酵菌・酵母である。

チーズを作る微生物はこのうち発酵菌に分類され、よく乳製品のパッケージにでかでかと書かれている乳酸菌がこれにあたる。

乳酸菌は、乳酸を発生させて液体中性から酸性に変える役割を果たす。これにより、酸性の液体内では雑菌の繁殖が抑制されるので腐敗を防ぐ。

そして、酸性値の高い環境では酵母が活発になり、分解された多糖類を酵母がさらに分解してアルコールと二酸化炭素を生成する。

アルコールは揮発性が高く、脱水作用がある。上述したように、生物は水がなくては生きていけないので乾燥から身を守るが、アルコールの中では雑菌は生命の源である水を奪われるので生きていけない。

濡れた手でアルコール消毒しても意味がないのは、雑菌が脱水してもすぐに水分を補給できてしまうからだ。

アルコール発酵

アルコールの話が出たのでついでに酒の話をしようと思う。

酒には、アルコール発酵したままの酒・醸造酒(ワイン、日本酒、ビール)と、醸造酒を蒸留してアルコール濃度を高めた蒸留酒(ウイスキー、ブランデー、焼酎)に分けられる。

これらの酒はアルコール発酵によって生成されたアルコールを含んでいるのだが、そもそもアルコール発酵とは何か。

ブドウ糖を酵母が発酵させて、エタノールと二酸化炭素を生成させることである。

このアルコール発酵は酒以外にもパンを作るのにも利用されている。

パンを生地から作ったことがある人、もしくはそういう資料か何かを見たことがある人はご存知と思うが、パン生地はイースト菌をまぜてしばらく置いておくと大きくなる。

これはアルコール発酵によって、生成された二酸化炭素が生地を膨らませているのだ。

古代エジプトでは、生焼けのパンを水につけることでさらにアルコール発酵を促進させて酒を造っていたらしいが、焼成されたパンでは酵母菌が死滅しているのでアルコール発酵はしないし、そもそもイースト菌や酵母菌の代わりにベーキングパウダーを使用している場合は菌が存在しないので再発酵はできない。

遊牧時代に飲んだ酒

肝心の酒の話は、また別の機会に書こうと思うが、せっかくアルコール発酵の話をしているので最後にひとつだけ。

モンゴルで遊牧民として生活していた時に、馬乳酒を飲んだことがある。

これは馬の乳をアルコール発酵させたものだ。

友人知人に馬乳酒の存在を当然知っているものとしてこの話をすると、まず馬乳酒を知らないひとが多くて驚いたことがある。

そこで記憶を掘り返してみたが、おそらく自分が馬乳酒を知ったきっかけは小学校低学年の時に国語の教科書に出てきた「スーホと白い馬」という話だ。

この話に興味を持って調べていた時に馬乳酒という言葉を知ったのだろう。思えば、この頃から遊牧民として生きたかったのかもしれない。

ちなみに憧れの馬乳酒はカルピスから甘さを抜いて腐らせたような味だった。

普通に吐いた。

この馬乳酒だが、馬の乳に含まれる乳糖をもとにアルコール発酵させるのだが、酵母菌はすでに出来ている馬乳酒をまぜるか、ツリガネ草科の野草をぶちこむ。

そして2~3日かけてずっと攪拌させる地獄の作業の先に、あの腐った白濁色のわけのわからない酒が完成する。

馬の乳に含まれる乳糖は全体の7%程なので、これが分解されてできた馬乳酒のアルコール含量は1~2%しかない。

こんな不味くて酔えない酒をなんのために飲むのかと聞いたら、腹をこわすためだと答えが返ってきた。

曰く、馬乳酒は1年のうちで夏にしかのむことのできないもので、これを飲むことによって現地人も腹を下すのだとか。

そして、体内から不浄なものを便として排出することで肉体を清めるらしい。

面白い考え方をするなぁ、と思ったが、何より面白かったのは死体でもいれるのかってぐらいでかい壺いっぱいに馬乳酒が造られていたことだ

一杯飲めば腹を下すのに何故あんなに大量に用意されていたのか意味が分からない。

発酵についてよりよく知るために、世界一予約のとれないレストランnomaのシェフが著した発酵ガイドを8,000円ぐらいで買ったけどあれ全然読めてないなぁ。

誰か要約してくれる人がいれば貸すので遠慮なく言ってください。

では、また。